「しょうがない」の使い道

「しょうがない」の使い道

  • 変えられないものを、受け入れる強さを持つ
  • 変えられるものへ挑む勇気を持つ

すごく、かっこ付けたフレーズを並べました。

現在ではもうないでしょうが、昔の研修医時代は、24時間勤務・数時間の仮眠、カップラーメン、また次の勤務が始まる。

当時は当たり前だった生活を数年おくった後、過労から思考が停止することで、悟りを開いた私が出した結論です。

「結局、人生ってそういうことかも」

そんな気持ちになっていただけたら幸いです。

最も嫌いな言葉、「しょうがない」

変えられないものを、受け入れるとき、半ば諦めたように感じる人もいるかもしれません。否定的な意味は含みません。

「しょうがないよね」「全力でやりきったもんね」と、胸を張って「変えられないもの」を受け入れる、むしろ清々しいイメージです。

「しょうがない」というセリフは、私が最も嫌いな言葉です。

「そんな簡単に諦めるなよ!」という熱い気持ちが前提にあるからです。

忘れもしない、ICU(集中治療室)勤務時代。

文字通り、「命をかけた、病気との戦い」に破れ、担当患者さんが亡くなったことがありました。

当時、百戦錬磨だった私は、初めての敗北感に、無気力になりました。

それ以上に、患者家族の悲しむ姿をみて、悔しくて悲しくて、「変えられない事実」を受け止められずにいました。

「しょうがないこと」

医療スタッフ休憩室の隅で泣いていた私に、ベテランスタッフが声をかけてくれました。

「どんなに最高の治療をしても、人の命の行方だけは、最後は神様が決めるんだろうね」

「先生の努力は、絶対、だれかに届いている」

この時点でも私はまだ、受け入れられませんでした。

来る日も来る日も、治療の記録を見直しました。

やはりどこにも、「これ以上の改善点がない」という事実を目の当たりにします。

「投薬量も間違いはない」「投与のタイミングもベスト」

「処置にミスはない」

重箱の隅をつついても、ホコリ1つ得られませんでした。

考えうる全ての粗探しをやった後にようやく、ベテランスタッフの言葉が理解できました。

「『しょうがない』ってことが、この世にはあるんだな・・・」

「変えられるもの」と「変えられないもの」の区別

「変えられるもの」と、「変えられないもの」の区別は、人によって千差万別でしょう。

なぜなら、本人の価値観に委ねられるからです。

先ほどの例から私の場合は、「全てを試みてからじゃないと諦めがつかない」という性分でした。

全てとは、「自分の頭で思いつく解決法」「信頼する人たちから教えてもらう解決法」です。

仕事以外の場面でも、このような「自分ルール」に従っており、時には、「そこまで頑張らなくても…」と思われる時もあります。

しかし、本人は「今、できること」を、まるで「TO DO リスト」を淡々とこなしている感覚です。

結果がどうであれ、全力を尽くした方が後悔がないので気分が良いのです。

「やりきった!」と胸を張って清々しい感じです。

言い換えると、「やりたくて、やっている」ので、疲労感はありません。

継続して楽に努力ができます。

途中で努力が止まったときは、「あ、心の底ではやりたくなかった!」と気付くことも出来るので、とてもシンプルです。

「変えられるもの」を、簡単に「変えられない」と認定しない

私の認定基準は、「自分の頭で思いつく解決法」「信頼する人たちから教えてもらう解決法」を行ってもうまくいかない時だけ、「しょうがないね…」を使います。

本当に望んでいるものであれば、「しょうがないね」の後に、「だって、変えられないものだからね」に直結しないと思います。

アイディアはあっていたけど、行うのに適切な時期ではなかった「時差の可能性」を示唆し、時期を改めて再度挑戦をします。

「失敗」と認定するまでは、「成功の途中」とも解釈できますので。

「自分で考え出す方法」と「他人から教わる方法」を、時期を変えて何度か試すまでは、「しょうがない」と諦めません。

この往生際が悪い方法も、人生ゲームのようで、けっこう楽しいです。

「悩んでいる」という方はもしかすると、問題に対する解決法が頭で浮かんでいるにもかかわらず、はやばやと「しょうがないね、変えられないものだからね」と結論付けてしまうからだと、最近感じています。

多くの方たちの話を聞いてそう思いました。

さっさと諦めて平気そうに見えても、「本気出したら、『変えられるかもしれない』」と薄々気付いているから、モヤモヤと悩むのではないでしょうか。

 押し問答で時間を取ってしまうのは、非常にもったいないと、私は感じています。

簡単に「変えられない」と認定したくないこと その①

簡単に、「しょうがないね」「変えられないものだから、受け入れよう」で片付けてほしくないことがあります。

それは、「人の大切なもの」が害された時です。

人権です。

最も分かりやすいのが、「いじめ」です。

「あの人は仕事ができないから、いじめられてもしょうがないよね」

「人と違うから、いじめられて当然だよ」

「いじめられて、しょうがない」とはそう簡単に認定できませんよね。

迫害されて当然の人なんて、この世にいないと思います。

近年、アジアヘイトが世界中で巻き起こっています。

もしあなたの大切なだれかが、「アジア人だから、道ばたでいきなり殴られても、しょうがないよね」とは絶対に結論付けられないはずです。

「1人で出歩かない」「引っ越す」「適切な場所に訴え出る」 考えつく対策を全て試みると思います。

簡単に「変えられない」と認定したくないこと その②

人権は心の命ですが、身体の命もあります。

「前例がないから」「予算がないから」

こういった理由で、医療従事者に万全の防御服が与えらない場所があります。

北海道看護部協会は、「現場で働く看護師にまず定期PCR検査を受けさせてから、五輪に備えたい」と訴えておられました。

当然の訴えだと思いました。

どんなことよりも、PCR検査キットを購入することが最優先でしょう。

使命感溢れる彼らですが、大切な人や家族とも会えず、自費でホテル生活を送る医療従事者もいます。

こういった問題を、

「しょうがないね、前例がないから」

「しょうがないね、予算がないから」

と、はやばやと諦めたくありません。

現在世界では、前例がないことが起きていますし、予算に関してはこの世にある全ての捻出方法を試すことだって出来ます。

この世には、明晰な頭脳を使った「知的収入」を得るプロが存在し、協力してもらうことができます。

簡単に「変えられない」と認定したくないこと その③

物理的な心と身体の命に加え、多くの人が「もう変えられない」と思い込んでいるものがあります。

それは、「性格」です。

日常生活での命(性格)として考えます。

「私って根暗な性格だから、友達がいないんだよね」

「親に愛情もらえてないから、私は自己肯定感が低いんだよね」

「やりたいことあるけど、がんばれない性格なんです」

「私は何をやっても失敗するタイプなんだ」

近年の研究結果からも、生育環境が人格形成にもたらす影響は計り知れません。

大人になってからも、幼少期に受けた心の傷に振り回され、思うように人生が進まない人が後を絶ちません。

同様に、心理療法を用いた後天的な努力で性格は変えられるという研究結果もあります。

本人が、「負けた」と認めるまでは、諦めなくて良いのです。

勝ったか、負けたなんて自己判断でけっこうです。ご自分の人生のことなので。

むしろ、寿命が来て息絶える寸前まで、試合は継続しているのだと、応援しています。

簡単に「変えられない」と認定したくないこと その④

最後に、「人間関係」を挙げます。

人生を豊かにするものとして、最も重要な因子です。

だから、簡単に諦めたくはありません。

近年人々の多様化から、いろんな人間関係のカタチがあります。

  • 「機能不全家族」と呼ばれる、家族がバラバラになった例
  • 親友との絶交
  • 些細な喧嘩から別れた恋人たち
  • 他の要因で、無理やり引き離された人たち

人間は感情を持ちますので、相手の同意が必要です。

相手が望むのであれば、一度壊れてしまった人間関係の修復は、時期を改め再度挑戦する価値があるでしょう。

大切な人であっても、上手くいかないときは、「試合は、中休み中」とでも考えられます。

人間関係は非常にセンシティブな内容なので、そう簡単に踏み込めない領域です。

相手に直接、「元気か?」と尋ねられない関係であっても、今の時代は、 SNS やメディアを通じて、活躍を知ることだってできます。

「壊れたもの、変えられないもの」と認定してしまわない諦めない精神が大切です。

死に際に最後数秒の再会が出来る可能性だってあるわけですから。

最後に

変えられるものへ挑むテクニックを紹介した情報を多く見かけます。

公私ともに応用したいものばかりです。

今回のコラムでは、もっと深い部分に焦点を当てました。

心と身体の命、日常生活での命(性格)、最後に人間関係を挙げました。

絶対に「しょうがない」と認定しないこと、変化することを最後まで諦めない大前提が鍵のようです。

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この記事を書いたドクター

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福島 八枝子
明るく好奇心旺盛な整形外科専門医Dr.ヤエコフがお届けします。スポーツ医学の本場アメリカで研究したPM&R(Physical Medicine& Rehabilitation)を扱う最新医学情報をはじめ、海外や日本での生活におけるおもしろエピソード等をご紹介

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