「スマホ脳」を読んで、緊急報告

「スマホ脳」を読んで、緊急報告

今話題の「スマホ脳」という書籍をご存じでしょうか?教育大国スウェーデンを震撼させた世界的ベストセラー。

読んでみた感想は「こりゃあオモシロい」。

医学的で論理的な興味が湧き上がるのと同時に、「こりゃあちょっと緊急事態だ」と、危機感が出てきました。

なぜなら、実は日々感じていた危機だからです。

「使い方を誤ると、百害あって一利なし」

サブタイトルにある「スティーブ・ジョブズはわが子になぜiPadを触らせなかったのか・・・」の言葉にぐっと興味が引きつけられますよね。

「え?あのジョブズが?」

本文からは他にもFacebookの「いいね」機能を開発したジャスティン・ローゼンスタイン(Facebook社)も、iPhoneの開発に携わったApple社のトニー・フェデルも子ども達がデジタルデバイスやSNSに依存症となっている現代に罪悪感を抱いていると言う。

まるで、眼科医がコンタクトレンズを使用せず眼鏡を愛用する、整形外科医がハイヒールを履かない理由、産業医の多くが4時間以上パソコンをしない、内科医が発酵食品を好む、消化器内科医がハムやソーセージなどの加工品を好まない…など。

専門家の意見とはやはりとても気になるものです。

この書籍もスウェーデンの精神科医師によって書かれています。

冷静に真摯に、今すぐ多くの日本人に事実や知識を理解してもらいたく本書の要約と個人的な見解を解説していきます。

本書の要約

  1. スウェーデンでは16歳以上の国民の9人に1人が抗うつ薬を服用している
  2. 筆者が原因を探求したところ、スマホの普及と鬱病の罹患率が相関している点に目をつけた
  3. テクノロジーの開発と功罪を熟知したスティーブ・ジョブズが我が子にiPadを与えてもスクリーンタイムを厳しく制限した事実
  4. スウェーデンの11歳児の約98%が自分のスマホを保有するのに対し、ビル・ゲイツは14歳になるまで我が子にスマホを持たせなかった事実。彼もまたデジタルの功罪をもちろん知り尽くしている
  5. 報酬ホルモンの1つであるドーパミンとは元々、頑張った後や好きなものを手に入れる時に感じる「元気な気分」を与えるご褒美の1つだった(一般的に広く知られている内容)
  6. ドーパミンにはさらに重大な役割があるという、「何に集中するべきか?」を的確に選択させるいわば現代人にとっての生きる原動力でもある
  7. その原動力を利用されたデジタルビジネスが近年大成功している
  8. その原理をしる本当の世界トップクラスのテック界の大人は、子どもへデジタル・デバイスを与えないか、使用を徹底的に厳しく制限することが常識
  9. デジタルデバイスを代表するスマホは日々、何百というドーパミン放出の機会を人に与えている小さな「ドーパミン分泌刺激マシーン」
  10. スマホ中毒とは単にドーパミン依存症である(本書の表現は「スマホは最新のドラッグだ」)
  11. 依存症の症状:睡眠障害、鬱症状、記憶力・集中力の低下、学力低下、依存物を失ったときの失望感や過度な喪失感

「恋愛なんて所詮ドーパミン遊びだろ?!」という名セリフを言った学生時代

報酬ホルモンの1つであるドーパミンとは元々、頑張った後や好きな物/者を手に入れる時に感じる「最高に元気な気分」を誘発する脳内ホルモンです。

詳細には、頑張っている最中に分泌されます。

競争をしている時、何かを達成しようと頑張っている時、食料を獲た時、他人との付き合いがうまくいったり、人間関係がより深まった時に、あなたはとても喜んだり達成感で満たされますよね?

ちょっと淡泊な言い方をすると、これは単に、頭の中でドーパミンが分泌し充満されただけです。

何かが達成した時にはもうすでにドーパミン分泌のピークは終わっています。

だから人は達成した時に実はもう飽きています。

もし恋愛を典型的なドーパミン遊びとして考えるのなら、付き合えるようになるためのアプローチが楽しくて、いざ交際が始まるとすぐに飽きてしまうことになります。

これではいつまでたっても、生涯を添い遂げるパートナー選びに繋がらない理由です。

次のドーパミン分泌を促進する対象物探しへ

飽きたらまた次の対象物を探しにいきます。

自分の頭の中によりたくさんのドーパミンが分泌出来るものを。

趣味、仕事、恋愛、テレビゲームでもギャンブルでもなんでもOKです。

となれば、ある側面から見れば、「独りでドーパミン分泌遊びをしているだけ」とも解釈出来なくもありませんよね。

だって、本当は別にそれが欲しいわけでもなかったので。

これまで私は競争社会を生きて、欲しかった人や物、業績を得てきました。

何をしてきたかというと、単に自分の頭の中からドーパミンがよりたくさん分泌できるものを得てきただけです。

その結果、様々な業績や所有物が現在身の回りにあります。

「だから?」

現在それらの成果物を見ても感じても、それについて話しても今はもう脳内ドーパミンは分泌されません。

「ただの過去の一部」としてもし、だれかが喜ぶならそのノウハウも惜しげも無く伝えます。

あなたの人生はどんな「ドーパミン探しの旅」ですか?

ドーパミンのもう1つの重大な役割

ドーパミンには、もう1つの重大な役割があると筆者は言います。「何に集中するべきか?」を的確に選択させる作用。

いわば、人類が生きる原動力にあたるものです。

つまり、古来人間は生き延びるのに、「たった今、何に集中すべきか?」と選択の連続でした。

動物に襲われた時に、逃げるのか戦うのか、今晩の食料にするのか、食べて良い木のみや薬草の選定など。

現代社会では「集中」することが非常に難しいと筆者はいいます。

パソコンで何か文章を書いていても度重なる E メールやメッセージの通知。 通知が表示される度に、集中力が削がれます。 メールやメッセージを開いてしまえばもう元の作業には戻って来れません。大分と時間がかかるでしょう。

他のものに気がいってしまうのは「おっ!何か新しいドーパミン刺激物かな?」という期待からです。

まさにドーパミンに左右された状態とも言えます。

食文化と適切に付き合う

空腹時、机の上に食べ物が出てきて、それを見るだけで私たちはドーパミンを分泌させることが出来ます。つまり、まだ食べていないけど、これから食料が得られる期待感です。実際に食事をとったときに美味しいと感じるのは、エンドルフィンです。これはまた別の脳内ホルモンで、「体内のモルヒネ」と呼ばれるほどに強力です。

つまり、「美味しいものを食べたい」という欲求は、ドーパミンにより生じ、エンドルフィンが美味しいと感じさせてくれます。

日本は世界が誇る「食文化」があります。和食は今や「wa syo ku」とカタカナ発音でも通じるほど。

このコロナパンデミックによる自粛期間に、日常生活の一部であった外食や飲み会が実施出来なくなったことで、異常なまでの失望感や喪失感を持つ人がたくさんいました。つまり、自分の頭の中でのドーパミンとエンドルフィン分泌をする機会が減ったことを嘆いていたのです。

それに耐えきれない人が自粛期間中にも関わらず大勢と密室での飲み会や食事会をしていたとニュースになっていました。

「美食家」と呼ばれる、「食」をプロの職業としている人たちはどうだったでしょうか?

美味しい食事会が開催できないからといって「異常に元気が出ない」とか、「何のために頑張って生きてるかわからない」「生きる楽しみがなくなって極度に悲しい」と嘆いていなかったと思います。素人の「食いしん坊」ほど、単なるドーパミン依存症だった可能性が高く、外出の自粛がそうとう堪えたようです。

外食産業が盛んな日本において、私はこういった人口は少なくないとも感じています

ドーパミン遊びからセロトニン遊びへ

ーよりあなたの「幸せ」にあうのはどっち?ー

最近では、ドーパミン遊びに飽きてセロトニン遊びに移行しました。なぜなら、セロトニンのような「ゆったり、平和に」「リラックス人生」の方が性に合っていると思うようになったからです。さらに愛情ホルモンのオキシトシンも味わい深いものです。ドーパミン分泌を促す行動は、人生を楽しむちょっとしたスパイス程度として嗜む程度に留め、セロトニン/オキシトシンLIFEを送っています。

こういった段階を経てより一層強く思うのは、もし全ての人間がドーパミン依存症の素質があるのなら、どうせなら「良いもの」に依存して欲しいなと願います。

医療問題、環境汚染問題、差別問題、戦争/紛争解決など。「解決しようとする課程」でドーパミンが分泌されますので、より難しい問題に取り組むのが良いでしょう。良いことをしてなおかつたくさん分泌されるならお得です。順位を競う競争が未だに好きな方は、川のゴミ拾い対決をお勧めします。1時間の間に何個ゴミを拾えたかその数を競うのです。もしくは、パートナーや家族とともに冗談を言い合い「たくさん笑わせる対決」なども。

人間の弱点と強みが同じ

人間を突き動かすホルモンであるこのドーパミンをよりたくさん分泌してくれる物や人、事象に「非常に弱い」ということを覚えておかねばなりません。なぜなら、悪い依存状態に陥ったら本末転倒、今度は「幸せ」から遠ざかってしまうからです。

代表的な例として、近年大成功してドーパミン分泌促進をちらつかせるデジタルビジネスが挙げられます。「便利だから」と1日に数十分ほど、スマホで調べものをするなら健康的でしょう。しかし多くの依存状態にある人は、「わーい、ドーパミンをたくさん分泌させてくれてありがとう!」とオンライン上に、どんどん、どんどんお金を投じています。

お金だけならまだしも、時間も労力も過剰に費やし、現実で触れ合う人間関係に歪みが生じだしたら要注意です。さらに、SNSをぼーっと眺め、他人と比較し自己肯定感を下げ続けるのであれば、もっとよろしくない緊急事態だと思います。

人間の生きる原動力であるドーパミンが悪用される危険性を危惧することだけは、現代を生きる上で非常に重要になってきます。

だれもがドーパミン依存症のリスクにさらされる現代

「子供がうるさいのでついスマホを手渡し、動画を見させてしまう」

「うちの子に、『外で運動しておいで』と言ってもスマホテレビゲームにかじりついて家から出ないんです」

「大人も動画ばかり見ていて、家族全員が運動不足です(笑)」

こんなお悩みが自粛期間中に多く寄せられます。

数少ない公園への出入りが禁止されたり、遊具の使用禁止など本当に難しい時間です。

多くの人が運動不足になっています。

ただここでひとつ笑えないことが1つあります。

「子供と大人は違う」ということ。 子供は単に大人を小さくしただけではありません。

全てにおいてまだ未熟である、発達段階だということです。

具体的に言うと、スマホを長時間見ていてもそれが体に悪いことだと分かりません。

大人であれば「目が疲れたね」と中断することができますが、子供はそれができません。

目の前にお菓子が置いてあれば「夕食前だから食べるのをやめておこう」とは思えません。

高価な物を与えると、どんどんエスカレートします。「去年は誕生日に5000円もする高価なおもちゃを買ってもらったから、今年は勉強に役立つ3000円の文房具セットが良いな」とはなりません。

平気で10万円のロボット人形を欲しがったりします。

「去年、1万円のおもちゃ買ってくれたじゃん?なんで10万円はだめなの?」

大人であっても気が緩めばついつい依存してしまう物が現代には溢れています。

大人は自分自身に気を付けるとともに、もし子どもへ依存のリスクがあるものを与える時は、適切な使用方法やその物の価値、様々な説明がセットで必要となります。

多くの大人たちは不安や罪悪感を抱えている

これほどまでに多くの大人たちが、不安や罪悪感を抱えている時はないかと思います。

「私が渡したスマホでうちの保育園児が、動画を4時間も見ているけど本当に大丈夫なのかな?」

「小学校低学年の子が、お菓子やケーキばかりを好み野菜や食事をしっかりとらないけど本当にこれでいいのかな?」

「おもちゃを買う約束をしないと一切、口をきいてくれないけど大丈夫かな?」

「スマホやテレビゲームを取り上げると何時間も泣きわめいて怒ったり、『この世の終わり』みたいな顔をするのだけど、大丈夫かな?」

どれも大丈夫じゃありません。

子どもも大人もドーパミン依存症になるリスクにさらされる現代において、欲しがるものをただ欲求のまま得ることは、着実に依存症へ押し進めているといっても過言ではないと、肝に銘じておきましょう。

大人も子どもも、「適度に」「自然に」という意識が重要です。

ドーパミン遊びは無料でできます

ちなみに、ドーパミンはスポーツ活動やトレーニングでも分泌されますし、必ずしもお金を払わないと得られないものではありません。

一人で分泌できます。

例えば散歩に出て、「落ち葉を踏まずに歩くゲーム」「紅葉が始まっている葉っぱの数かぞえゲーム」。

「昨日の自分」との勝負を楽しみます。

例えば、昨日は10回しかできなかった腹筋トレーニングを11回行うといった具合です。

他にもたくさんあげられます。

  1. 溜まっている仕事を音楽を聴きながらノリノリになって片付ける
  2. 親子でお片付け対決
  3. (近隣が気になるひとはイヤフォンをして)おうちDEダンスパーティー/家族DEダンスパーティー
  4. 近所の公園で、様々な投げ方でキャッチボール「難しいボールもキャッチ出来るかな?」
  5. 大好きなレストランの味を真似た創作料理をしてみる
  6. これまでの自分の仕事での成功体験やノウハウをブログに書いてみる
  7. パートナーや家族といつかのために旅行プランを相談する
  8. これまでやってこなかった趣味を思い切って始めてみる
  9. 会社を定年退職し、もう一度大学に入りなおしてみる
  10. 疎遠になっていた友人や親族、同僚や恩師に連絡を取ってみる
  11. 好きな人に想いを伝える

本当に何でもいいんです。

無意識に避けていたことを現実に行う行為は無料でドーパミン分泌できるだけでなく、何か心のつっかえが取れ、 気分よく過ごせる秘訣でもあります。 

まとめ

「人は脳内ホルモンを分泌したいがために行動しているだけ」

そんな視点で社会を見た時、仕事に依存して家庭を崩壊させたり、ストレスから自虐行為にはしったり、電子デバイスに依存して友達や恋人を失ったりたり。

「一体人間は何をやっているんだろう」と悲しくなることがありました。

しかし人類が発展してくる中で、このドーパミン刺激による原動は生き延びるための手段だったのでしょう。だから、感謝をするとともに現代風にカスタマイズする必要があります。

こんな時だからこそ思い切ってスマホやパソコンを閉じて、大切な人と自然の中に出向きゆっくりとゆったりと時を過ごしてみてはいかがでしょうか?

料理が苦手な人でも愛情込めて作るサンドイッチやおにぎりは格別かもしれません

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この記事を書いたドクター

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福島 八枝子
明るく好奇心旺盛な整形外科専門医Dr.ヤエコフがお届けします。スポーツ医学の本場アメリカで研究したPM&R(Physical Medicine& Rehabilitation)を扱う最新医学情報をはじめ、海外や日本での生活におけるおもしろエピソード等をご紹介

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