愛着障害ではわくわく・楽しい気持ちが当てにならない

愛着障害ではわくわく・楽しい気持ちが当てにならない

みなさんは巷で人気の自己啓発本によく書かれている「不快に感じるなら止めろ。心からワクワクすること・楽しいと感じる事だけをして生きよ!」説についてどう思われますか?

もちろん、わくわく・楽しい事だけで生きている身としてこのフレーズには同意しているのですが、1つ注意点がある事をそのような自己啓発本には書いていないことに気が付きました。

(久々に医者っぽく病態名で言いますが、)愛着障害には①愛着障害の回避型②愛着障害の不安型③愛着障害の恐れ・回避型があるのですが、冒頭の「愛着障害の回避型」の例では、このフレーズを鵜呑みにして行動するのは危険だということです。

詳細は後に説明します。

こちらの図をまず見て頂くと分かるように、本来人間誰しもが求めている「愛情」や「幸福」がいざ手に入りそうになると、自ら避けて逃げてしまう言動システムを搭載している人種が存在するのです。

「愛着障害の回避型」が取る言動の1例です。

愛着障害とは病態名の1つ

え?「愛着障害」?!と初めて耳にした方もいるかもしれません。

これは医学的な診断を目的とした用語ではなく、病態名です。つまり、人の特徴を表す言葉ですね。英語ではattachment disorderと呼ばれ、愛着行動に対して理解不能な言動がある人や不安定な人、愛着に関する問題全般を、愛着障害としてとらえられているそうです。

愛着行動とは簡単に言うと「愛し愛する言動全て」です。例えば幼い頃、好きな子にちょっかいをかけたり、大人になって素敵なレストランを予約してデートに誘ったりなど気を引こうとする行動が分かりやすいでしょう。 

愛着障害は何も子どもだけの問題ではなく、それを抱えたまま大人になった場合は当然、大人の生き辛さ問題として、理解されるようになっています。

例えば最近のこの類いで病名ではなく病態名として一般化されている用語に「発達障害」も挙げられます。健康や幸福論に興味を持つ人が増えたからこそ日常でこのような病態名が使われるようになってきたと思います。

生き辛い人が多いのでしょうかね。

症状!切望する「愛情」や「幸福」を自ら避けてしまう

「愛情」や「幸福」を自ら避けてしまうシステムが人の中に存在するなんて信じられないですよね?代表作である「愛着障害の克服(光文社)」の作者でありこの道の権威である岡田尊司先生は、日本人に愛着障害は意外に少なくないと書籍の中で述べられています。

もしかすると、あなた自身もあなたの周りにいる人も十分に可能性があるということなんです。

「愛着障害の回避型」が取る言動の1例です。

大前提として「幸せ」になりたいからそのようなガイドを示すような書籍を買いました。読んでみて得たヒントは「不快に感じる事は止める。心からワクワクすることをしよう。」でした。

「よぉーし、自分の感覚を信じて!」と不快を避けるような行動を取ろうと努力します。ここで2パターンあり、以下に具体例を示します。

より良い人生を得るパターン

幼少期から大人の顔色をうかがう癖が付いたAさん。幼い頃に抱いた強い警察官になりたい夢を語ると周囲から否定的な意見を浴びて育ちました。いつしかその夢さえも語らない大人になりました。「もし警察官になれたら・・・」と自然に湧き上がる楽しい感情と同時に、「女の子なんだから大人しくしなさい。」「あんたなんて無理だよ」という散々浴びてきた言葉と否定的な感情が生じ、結果として疲れてしまうからです。ワクワクとともに必ずセットでネガティブな感情が現れて疲れるくらいなら、最初のワクワク感情さえも想起することを止めてしまったのでしょう。

こういった場合は、まず最初に生じた感情をありのままの本音と捉え、連なって生じる否定的な感情は他者から受け取ったものと考えます。ここで、ヒントを適応します。

「不快に感じる事は止める。心からワクワクすることをしよう。」

これまで警察官になる夢を考えた時の気分を、否定:楽しい=9:1だったとします。不快に感じる自己否定的な感情をいったん脇に置き、この1の部分(自然に湧き上がる楽しい感情)を大切に着目し育ててみます。

結果、書籍から得たヒント通りの心からワクワクする楽しい事が何かが明確になり、邁進できる様になりました。否定:楽しい=1:9と割合を全く逆に出来たのです。

より寂しい人生を得るパターン

容姿端麗、高学歴・高収入、学生時代はサッカー部だったという B さん。社会では憧れの的。と同時に、恋人ができても長続きしないことで有名でもあります。その別れ方もひどいとの噂。噂とは反対に彼の本心は、むしろ長く永遠に続く愛情を強く求めています。恋人と別れる度にひどく落ち込み、「このまま死のうか」と親友にもらすこともありました。

そうこうして、今回は偶然にも医療職の恋人ができました。付き合って1ヶ月間程は社内の評判通りのスマートでハンサムな言動のBさん。しかし付き合いが2ヶ月目に入った頃から「メールの返信が遅い」「電話に出なかったのは浮気をしていたんだな」と執拗に怒るようになりました。

この時点で B さんにとって、彼女との付き合い不快なわけですよね。メッセージの返信が来ない間、耐えられないほどの孤独感が襲うのです。

「不快に感じる事は止める。心からワクワクすることをしよう。」

書籍から得た安直なヒントに従うと、この交際はわくわく楽しいことではなく不快なので、別れを選んだほうが良いという決断になってしまいます。

しかしちょっと待ってください。そもそも、彼自身は深い愛情を求めており、むしろ本当は別れるどころか上手くいきたいのです。付き合いを重ねて愛情が高ぶるからこそ感じる恐怖心が、彼を執拗にさせたのです。だから、別れるのは逆効果で、ひどく傷つくのです。

これまでの恋人なら彼の豹変ぶりに対応できずひどい別れ方となるのは当然でした。そして安直に得た人生のガイドに従った故に、より寂しい人生へと進んでしまいます。

しかし今回の例では偶然か必然か、心理学を得意とする看護師がお相手であったため愛着障害の可能性に気付いてもらえ、今では一緒に心理カウンセリングでの治療を受けながら上手く付き合う方法を模索しています。

愛着障害の隠れた事実

30代、40代男女問わずずっとシングルだった友人にやっと恋人が出来たと聞くと嬉しくなりませんか?「あぁ、本当に良かった。」と。

しかし、その数週間後に、「あんな人、最低だった。別れた。」と聞きます。 これまでの例を参考にするとここでちょっと疑問が湧きます。本当に何かひどいことをされたなら別れた方が良いかもしれませんが、そこに愛着障害が隠れていないでしょうか。

愛着障害である人は実はこういう事実が隠れていたりします。

本人の証言
真実
恋人に電話をかけたが、出なかった→出ないということは「私のことが嫌いになった」という表明である→もう私達に未来はないのでそんな人はこちらから別れておいた方が「幸せ」のためだ→相手の事情を全く考えず一方的に別れを告げる
仕事中だったので、会議などでたまたま電話に出られなかっただけ。謝罪と説明をするも、全く聞いてもらえない。
突然の別れ話に相手が困惑する→「慌てる」という事は図星であると解釈→こんなひどい人とは連絡を絶った方が良い→突然、SNSをブロック→電話番号を着信拒否
心に決めた相手だったので誤解を解きたくて一生懸命に、電話をかけ直したり、弁明のメッセージを送るが、頑なに拒否される。最終的には大きな破局。

互いの証言は全く異なっていますよね。せっかく、愛してくれる人が見つかっても自分から去ってしまう、という意味不明な現象をこうやって自ら作り上げてしまいます。 

まとめ

愛着障害の回避型の例を主に挙げました。専門家の書籍や論文に詳細を委ねますが、まずはこのような病態を持つ人がいる事実を知っていただくためにコラムにまとめました。書店に数多く並ぶ自己啓発本や安直な人生のガイド本を鵜呑みにするのは、一部の人にとって非常に危険だということです。

いろんな書籍を読んでみるのも一つの勉強手段ですが、いま一度冷静に、本当の自分の夢や希望が何なのかを考えてみてください。これは書籍がなくても自問自答でできることです。

「あなたの本音はなんですか?」

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この記事を書いたドクター

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福島 八枝子
明るく好奇心旺盛な整形外科専門医Dr.ヤエコフがお届けします。スポーツ医学の本場アメリカで研究したPM&R(Physical Medicine& Rehabilitation)を扱う最新医学情報をはじめ、海外や日本での生活におけるおもしろエピソード等をご紹介

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